背景:
以前のメールマガジン(Vol.25)にて、皮下膵島移植前にゼラチンハイドロゲル不織
布(GHNF)を移植部位へ前留置することで、移植結果を著しく改善できることをご
紹介しました。当該論文では、移植結果の改善にはECM産生と種々の成長因子によ
る膵島機能の保護が寄与しており、新生血管はさほど増えていないことが言及されて
います。
目的:
抗アポトーシス性サイトカインや血管新生性サイトカインを分泌して血管再生プロ
セスを改善することが報告されている脂肪組織由来幹細胞(ADSCs)とGHNFを組
み合わせることで、膵島移植部位により効果的に血管を新生し、皮下膵島移植の移
植結果を改善できるかを確認しました。
方法:
2枚のGHNFにADSCsを5.0×10⁵ cellsずつ播種し、37℃、5% CO₂下で一晩インキュ
ベートしました。2枚のADSCs播種済みGHNFでシリコンスペーサーを挟み、マウス
皮下に前留置し(6週間前)、シリコンスペーサーを除去後の空いたスペースに、膵島
180個相当を移植しました。
結果:
・ADSCs播種済みGHNFを前留置した群(AG group)は、シリコンスペーサーのみを
前留置した群(Silicone group)や肝門脈に膵島を投与した群(IPO group)と比較
して、血糖値変化が良化しました。
・AG groupの糖尿病治癒率; 72.7%が、他の群(GHNFのみを前留置した群(GHNF
group);40.0%、Silicone; 0%、IPO; 40.0%)と比較して最も高い値となりまし
た。
・vWF陽性血管数は、AG Groupが他の群と比較して顕著に多くなりました。
・移植したADSCsは、移植6週間後には残存していませんでした。
・炎症メディエーターはSilicone group(対照群)に比べてAG group、GHNF groupで
低下する傾向が確認されました。